Kennさん
40代前半 会社員(正社員) 大阪府から移住

2019年の年の瀬に、これまでずっと生活の拠点としていた関西から、誰ひとりとして身寄りがいない広島へと移住してきました。住みたいと思って実際に移住するまでの期間はおよそ半年。不安は全くありませんでした。
私にとって、趣味の域を超えて「ライフワーク」と呼ぶサイクリングが、広島と出会わせてくれたのだと思っています。

なぜ、広島なのか?

本題に入るその前に、広島へ移り住む決断に至るまでを触れさせてください。

 

海に面していない奈良で生まれ育った私にとって、海の存在は非日常そのものでした。海を見に行くとすれば、隣県の和歌山や三重といった「大海原」を見に行くというのが普通でした。

2015年から、私は大阪でスポーツサイクリング関連企業に勤めながら、仕事でたびたび瀬戸内海方面へ出かけることがありました。

関西でも淡路島など、ギリギリ瀬戸内海?と言えるような立地で非日常のサイクリングを気軽に楽しむことはできますが、同年に初めて訪れた香川県の小豆島で、淡路島とは違うことを肌で感じました。今まで体験してきた太平洋や日本海のような海とは違う独特の世界観に、ハマった瞬間でした。

 

そして、いよいよ広島県での体験が始まります。

たった数時間の小豆島滞在でジャブをもらった私が次に魅了されたのは、尾道市でした。

広島県でサイクリングといえば「しまなみ海道」を連想させる方は多いことでしょう。

しかし私は、当時の出張期間では時間的な制約から、しまなみ海道を走破することはできませんでした。ですが、尾道水道を渡った向島と岩子島という比較的小さな島ながら、それぞれの島の外周を走っても40km弱、ロードバイクであれば2時間あれば走り切れる道に広がる景色に衝撃を受けました。そのインパクトは小豆島以上、関西で味わったことのない時間がボクを瀬戸内のトリコにさせました。

たった2時間、40km足らずで十分。むしろこんなに短い時間で贅沢なときを過ごせるのかとさえ思ったほどです。

 

自転車に乗っている時間、そうでない時間に関わらず、瀬戸内で過ごす穏やかな時間の流れと、優しく打ち寄せる波は、これまでにないこころが豊かなになる時間を与えてくれた。そのときの記憶が忘れられない自分がいました。そんな思いを抱きながら関西での日々が続いていたなかで、移住決意を後押ししてくれる出来事がありました。それが「安芸灘とびしま海道」でのサイクリングです。

2019年の8月、まだしまなみ海道すら走破していなかった私が、初めて訪れた安芸灘諸島。訪れる前のとびしま海道に対するイメージは「しまなみ海道のミニチュア版」といった印象でしたが、この考えは現地に着き、走り出してものの数分で打ち砕かれました。そして頭をよぎったのが、

 

「いつもの週末を、この景色の中で過ごせたら、最高やろなぁ。」

 

この思いは、同じ年に走り切るしまなみ海道を走った後でも変わることなく、むしろ増幅させる結果となりました。まるで想像と違う世界がギュッと詰まっていたのです。信号はひとつだけ、コンビニすらない。こんな場所があるのかと。当時のことを思い返しても未だに震えます。サイクリストにとって天国だと思ったのと同時に、ひとりの人間としてこの地域で過ごしたいという強い思いを強く抱いたのです。

 

その経験から4ヶ月後、私は広島市民として新たな人生をスタートさせることができました。

これまで当たり前のように耳にしていた関西弁は、公共の電波では耳にするものの、日常生活においてはほとんど耳にすることはありません。この事実は私にとって驚きであると同時に、生活していて何ら違和感もなく、むしろ温かみさえ感じられる広島弁の雰囲気は、聞いているだけで心地よいものです。広島に来てまだわずかな期間なので、自ら広島弁を発することはまだありませんが。笑

広島に住んでみないと得られない、広島ならではのものがたくさんあります。

例えば、食であれば「つけ麺」であったり、ホルモンの「コウネ」であったり。そして関西と比較されがちな代表的ソウルフードの「お好み焼き」は、私は広島のお好み焼きの方が断然好きです。そして驚いたのは、こちらで「どこのお好み焼きが好きですか?」と質問すれば、返ってくる答えは十人十色。このことに広島のお好み焼き文化は底知れないと感じました。大阪のお好み文化とはまるで違ってとても面白く、そして大阪のお好み焼きとは違い「粉もん」ではないということです。

 

都市部と自然の近さも、広島ならではだと思います。「広島デルタ」と呼ばれる市内にいくつもの川が流れる都市景観は、大阪にも「中之島」という地域がありとても近いものを感じますが、より自然と都市の融合を感じ、緑の多さで比較すれば広島は大阪以上ではないでしょうか。

 

そして何より、人の優しさを強く感じます。

大都会は、様々な地域からたくさんの人が集まって形成されています。つまり人の数が増えれば、考え方の違いも数多くあるわけです。広島市も中国地方最大の人口を有する都市にもかかわらず、穏やかで優しい方がとても多い印象です。やっぱり住んでいて心地よいのは、人との関わりなのではと思います。

私より先に他地域から移住された方との出会いも、私の広島での人生を豊かにしている要素のひとつです。ある種「同じ志」を抱いて移住を決断されたわけですから、生活を楽しまれている様子が伝わってきます。

 

そして冒頭でも触れた、サイクリストとしての目線でも、広島の魅力を簡潔に伝えしておきます。

瀬戸内海、中国山地、そして太田川をはじめとした川という要素が詰まった広島は、サイクリングを楽しむには最高のロケーションです。サイクリストとしてこれほど幸せな場所はないのではと思います。サイクリストとして経験を積み行動範囲が広がれば、呉市側のとびしま海道から尾道市側のしまなみ海道を一日で走ることができます。サイクリストでなくとも、広島の自然の豊さに心奪われるのではないでしょうか。

 

大阪や東京のように、ありとあらゆる物があふれているわけではありません。ごくまれに、生まれ育った奈良や社会人生活を送った大阪を恋しく感じることもあります。ですがそれ以上に、広島での生活はとても素晴らしく、大きな喜びに満ちあふれています。

私のストーリーに共感し、広島で生活してみたいと思ってくだされば、これほどに嬉しいことはありません。

 

迷っているならば、ぜひ移住に向けて前に進めてみてください。想像以上の素晴らしい世界が待っていると思います。

移住のステキを
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