金賞
2021
カワバタさん
30代前半 フリーランス 東京都から移住

はじめに

2021年夏に東京から広島に移住したCGデザイナーのカワバタです。

以前は東京やカナダのゲーム会社で3Dキャラクターを作るお仕事をしていました。

出身は大阪でその後仕事で横浜、東京と主に都市部を転々とし、数年前にカナダのトロントにも2年ほど住んでいました。

コロナ渦を期にリモートワークになり時間ができたことや、新しいワークスタイルを通じて「自分の人生において今何が重要か」がより明確になったように思います。

私の場合は

  • ①家族との時間
  • ②クリエイティブ作業に集中できるより快適な住環境
  • ③リフレッシュしやすい環境が近くにある

でした。

これらが実現できそうな場所という条件と、直観を信じて広島へ移住することにしました。

正直なところ「これが正解かどうか?」という確信はまだありませんが、

こればっかりは今自分がベストだと思える判断を積み重ねていくしかないと思っています。

なので、今回の私の移住動機は正直なところ「どうしても広島じゃないとできないこと」

ではないことも多いです。

ただ一つ確かなことは現在の状態として広島で楽しく暮らしています。

そんな私が移住に至った経緯と移住後に感じていることを書いていきます。

良ければしばしお付き合いください。

その違和感はおそらく当たっている

カナダから東京に帰国して2年の年月が過ぎる頃。

帰国前から既に「東京には長くいられない」と感じていました。

利便性・人との出会い・高い給与水準・仕事の機会など、この場所がもたらしてくれる

主なメリットが私の中で以前ほど重要ではなくなってきていたからかもしれません。

東京で住んでいた高円寺周辺では徒歩3分圏内に商店街、飲食店、古着店など何でもあり、少し出れば10分で新宿。間違いなく今まで住んだ場所で一番利便性の高い場所でした。

東京の中でも程よく地方感のある、どこか地元の大阪っぽい場所。

どこからともなく集まってくる個性的な人たちや、飲み屋街のにぎやかさなどといった

高円寺の土地柄のおかげもあり、それなりに楽しく暮らしていました。

しかし、収入に比例して家賃も高く、かといって会社から離れると満員電車の通勤時間が

延びるというジレンマから、そういった状況を甘んじて受け入れながら暮らしていました。幸いにもコロナ渦の影響によりリモートワーク中心の働き方にシフトしたおかげで、

ここ1年はほとんど通勤することはありませんでしたが、

そうなるとより「住む場所」として東京を意識するようになりました。

特に一度海外での生活を経験しているだけに、東京の人口密度は私にとってかなりストレスに感じていました。どこへ行っても人がいるにぎやかさは、裏を返すとどこへ行っても

人だらけで外出するのにかなり気合を入れる必要がありました。

それでもしばらく東京で暮らせていたのは、

おそらく「お金を稼ぐ装置」としてこの街を利用し、それによって蓄積したストレスを

消費という形で発散していたからだろうと思います。

しかし、本当に望んでいるものをこのような代償行為で満たそうとすると

「質」で満足できずに「量」が増えていく。

このスパイラルを続けていくことは一種の依存症にも似た状態で、

私が思う豊かな生活とは程遠いと感じていました。

選べる選択肢としては大きく2つ。

  • ①東京で出費を補って余りある収入を得ること。またその資金で豊かさを買う。
  • ②東京を出て生活コスト(主に家賃)を下げる。豊かさを感じられる場所に住む。

結果的に私は②を選びました。

前述したとおり、

経済的な側面を除いた「住む場所」としての東京に以前ほど魅力を感じなくなっていた

ことと併せて、「キャリアアップしてより高い収入を得る」ということが今の私にとってはどこか思考停止的に感じられてしまい、「そんなことをいつまでやるんだろう」という思いと共に少しばかばかしくなってしまったということが主な理由だと思います。

もちろん、生きていくうえで経済的な側面を無視することはできませんし、

これは単純な2者択一的な話ではないとも思っています。

いうなればこれは私にとって生きるうえでの優先順位を変えてみる実験のようなものです。

では、どこへ行こうか?

・・・とはいえどこへ行くかどうやって決めましょうか?

こういった大きな決断をする上で、

「直観」というものは意外と馬鹿にできない判断基準だと思います。

細かい移住理由は後程書きますが、少し前から「移住するなら広島かな」と

漠然と思っていました。不思議と物事がぐっと動くタイミングというものはあるもので、

そうこうしているうちに仕事が原因で体調を崩したのをきっかけにとんとん拍子で広島への移住が決まりました。ちょうど賃貸契約の更新月が迫っていたことも後押ししました。

広島以外でも「なんとなくここに住んでみたい、行ってみたい」そう思える場所を

リストアップしてみて、あとから虫眼鏡で見るように細かな情報を調べていました。

この時点では実現可能かどうかはいったん置いておいて、移住先は海外も視野に入れて

いました。例えばポーランド、ロンドン、マレーシア、オランダなど。

出来る・出来ない、役に立つ・立たないの基準をいったん捨てる。

そのあとその「なんとなく」と実益を天秤にかける。そんな意思決定の方法があってもいいのかなと思います。(結局海外移住はいろいろと手間もかかる上、この時点での引きはそこまで強くなかったため今回は選択肢から外しました)

ここで何をお伝えしたいかというと、移住を「何かを実現するための手段」として考えすぎると、「その目的が達成された時点でその移住は終わってしまうのでは?」ということです。

それよりも

「なんだか道が広くて歩きやすいしリラックスできる」

「夕焼けがきれいで懐かしいな」

「ふと入ったチェーン居酒屋の魚がびっくりするくらいおいしかった」

「この街の人当たりが好き」

「地名の字面や語感がいい」

みたいな、もっと感覚的な基準を大事にしてもいいのではないかと思います。

収入やキャリアアップという「目的」を外部報酬とするならば、これらはモノや行為自体に価値を感じている状態=内発的動機付けになります。内発的動機付けはしばしば実益とは切り離された部分であることが少なくないため見落とされがちですが、移住を考えるうえでは目的や結果に依存しない強いモチベーションになり得ると思います。

また、現在コロナ渦でなかなか移動が難しいとは思いますが、条件面以外でも判断基準を持つためにできるだけ現地の情報を肌で感じることはとても意義のあることだと思います。(この点について広島県の方々がオンラインイベントを頻繁に行っておられますので、実際に移住された方や同じように移住を考えておられる方とも事前に交流できとても助かりました。)

広島移住に何を期待していたか、また移住してどうだったか

①自然にアクセスしやすい

水を眺めたい、火を見たい、水に潜りたい、薪を割りたい etc...

・・・もうコレ何の生産性もないのですが、本能的にやりたいことなので優先しました。

昔から定期的に水辺に行きたいと思うことが多く、海に行くとずっと潜っているような

子どもでした。実際移住してからもたびたび海や川辺でぼんやりとしてリフレッシュする

ことが多いです。大阪や東京に住んでいるときは割とちゃんとした自然のある場所に出る

までにそれなりに距離があるため、気合を入れていかなければなりませんでしたが、

広島だと割と近場に自然があるのでそこはとても助かっています。

何をするでもなくぼーっと水面を眺めていると、「ああ、雲の色はこんなだったのか」とか「遠くで魚がはねた」とかどうでもいいような、よくないようなことを感じられて

頭がすっきりします。

②家賃が安い&一軒家に住んでみたい

私の場合、移住後は完全リモートでの仕事を想定していたため住環境は最優先事項でした。また生活音をあまり気にして暮らしたくないので1度一軒家で暮らしてみたいという希望もありました。結果的に引っ越して家賃は半分以下、広さは2倍以上になりました。

(がんばってそういう物件を探しました)

以前はキッチンのダイニング部分に机を置いて作業していたのですが、

念願の自室ができ、さらに趣味の音楽部屋も作ることができてうまく切り替えができるようになりました。とても快適です。

③災害(地震・津波)のリスクが比較的低い

災害そのものの被害もさることながら、東京のような人口密度の高い場所で大地震が起きた時の混乱が恐ろしいと感じていました。とはいえ日本中どのエリアでも災害のリスクはありますので、これに関しては上記のリスクよりも大雨災害などのリスクを取ったという形になろうかと思います。

④ちょうどいい位置

地元が大阪なので方言のあるざっくり西のほうで考えていました。

(地元はもう知っているし新鮮味がない、かといって九州まで行くとちょっと大阪・東京に出るのが大変そう)

⑤魚がおいしい

今まで住んだ東京・トロントともに魚介が特別おいしいところではなかったので、今度はもう少し海辺の町がいいなと考えていました。

「魚食べたいのに種類が少ないし高い」といつも豚肉か鶏肉を手に取っていたあの頃。

広島のスーパー(よく利用するのはマックスバリュ)では東京と比べて値段は同じ、

もしくは気持ち安くてクオリティは3~5割増しという感じです。

ちなみに果物と野菜は思ったより安くないです。

⑥好きなアーティストの地元であることが多い

個人的に土地が人格に与える影響は少なくないと思っています。なので好きなアーティストを掘り下げるときに「この人の人柄を育んだ土地ってどんなだろう」という観点からも

興味を持ちました。(同じ理由でアメリカのデトロイトには何度も通っています。)

ひらけた景色

広島市内からでも遠景には山が見える。これだけのことでとても開放感があり何か自然なことのように思います。東京では遠景にも山を見られるような余白がなかった。(もしくは私自身にそれを見られるような余白が無かった)。しばしばデメリットとして語られることもある「地方にはなにもない」ということは、裏を返せば贅沢なことなのかもしれません。

ひとりになれる場所がある、だけどひとりぼっち感はない

都心で誰もいない場所を探すのは難しいです。自然のある場所もかなり離れないと

なんだかんだ人が多かったりして、「自分自身と2人きりになる」ことができない。

時にはそういう時間も大事だと思うんです。かといって行けども行けども人がいない、

なんてことはなくて繁華街にも行けるコンパクトさもある。

そしてなんだか人と人の距離は気持ち近いような気がする。ちょうどいい。

おわりに

いろいろと感覚的な話も多かったのでうまく伝えられたか不安は残りますが、

私なりに文章にしてみました。

また今回働き方を考えるいい機会なので、あまり今までやってきたことに拘らずにいろいろと挑戦できればと思います。

皆さんの移住を考える上で何かしらの参考になれば幸いです。

審査コメントあり!
審査員 高橋 公さん

コロナ禍を期に、リモートワークという新しいワークスタイルが始まり、時間ができて「人生において何が重要か」が明確になったカワバタさん。それは、家族との時間であり、快適な住環境であり、リフレッシュできる環境が近くにあることだ、と気づいたとのことです。これを実現するために、直感を信じて広島へ移住したCGデザイナー。移住を「何かを実現するための手段」ではなく、「この街の人当たりが好き」のような、感覚的な基準で移住先を探すことがモチベーションを高めると話しています。さらに、土地が人格形成に与える影響も大きいとも言っておられ、こうしたことから、広島を選ばれたようです。広島移住の人気が納得できる一文でした。

移住のステキを
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