ログイン
HOME
INTERVIEW

生活の中で大切にしていた「環境」と「健康」、一緒にやらないかと誘われた瀬戸内海の島での地域づくり。「東京からの移住は“good decision”だったと思う。」

トム 宮川コールトン / 宮川 真伊さん

東京都 → 広島県
2015年
東京生まれ 家族2人暮らし(妻) 1982年生まれ  ドキュメンタリー写真家&ライター 著書:「オーガニック・アメリカンズ」「鉄道ねこ」「パブねこ」

宮川トムさんは、イギリス人の父親と日本人の母親(山梨県出身)を持つドキュメンタリーカメラマン・ライター。スコットランドの大学で知り合った、料理ライターの真伊さん(三重県出身)と結婚し、東京から広島の大崎下島・御手洗地区へ移住。二人の活動が地域に溶け込み、人口減少・高齢化・空き家の増加が進んでいた重伝建地区に少しずつ新たな賑わいが生まれています。

広島へ移住された経緯を教えてください。

トムさん)
妻の真伊とはスコットランドの大学で知り合い、東京で再会して結婚しました。結婚を機に、これからの家族のありかたを考えた時、自分たちの中で一番大事にしたいことは、「環境」や「健康」でした。
お互い都会生活は長かったけれど、一生懸命働いて稼いだお金のかなりの割合は、ただ東京に住むためだけに消えていることに気づきました。東京に対するこだわりは特別なく「豊かさ」のある土地を探すなら、東京よりも地方がいいのではと移住情報を探し始めました。でも、エリアを限定はしていませんでしたが情報がなかなかなくて苦労しました。
ある時、有楽町の「ふるさと回帰支援センター」に全国の地方移住の情報が集まっていると聞き、出向いて行って広島県の相談員・平野奈都子さんにお会いしました。
平野さんは、これまで話を聞いた方々とは違って、具体的なライフスタイルの例を話してくださり、初めて地方移住のイメージが湧きました。また私達のニーズにピッタリはまる情報をたくさん教えていただきました。

広島への移住の「決め手」は何だったのでしょうか?

トムさん)
平野さんに相談した後、広島県が主催する、御手洗地区をテーマにした「人材マッチングセミナー」に参加して御手洗を訪問しました。
広島では県庁の人たちに丁寧なサポートをしていただき、御手洗地区の方々とつながることができました。井上明さん(HIROBIROインタビュー参照)からは「一緒に地域づくりをしないか。」と声をかけてもらいました。
10月に平野さんにお会いして、もう11月には移住を決意していました(笑)。人と人がつながって移住に向けての「道」ができていったように感じています。
真伊さん)
御手洗を現地訪問した時には、大崎下島の方にも手厚く迎えていただき、2日間で多くの地域の方々に繋げていただきました。
呉市の軍港や造船所を見たときは、こんなかっこいい港町が日本にあるんだと驚き、住んでみたいと思いました。ちょうどタイミングよく地域おこし協力隊の募集があって、応募し採用いただいたこともあって正味3ヶ月ほどで移住しました。

移住後の仕事はどのようにされていますか?

トムさん)
移住した当初は、東京時代につきあいがあった企業等からの仕事を中心にしていましたが、東京からカメラマンを地方に送るより、現地のカメラマンを使った方が、時間を短縮できコストも抑えられることもあって依頼が増えました。
あとは、翻訳の仕事や時々Skypeでの英会話など、どこにいてもできる仕事です。翻訳は、日本語を英訳したり逆のパターンもあります。
移住の約半年後に、JA(その前は郵便局)であった空き施設を借り受け、改修して、写真ギャラリー「トムの写真館」をつくりました。私が撮った写真のポストカードや、友人の在京アーティストの作品、イギリスから取り寄せたグッズ等を販売するほか、写真の展示、スタジオ、カメラマンや写真愛好者の交流スペースを設けています。

「トムの写真館」は土日の営業ですが、徐々にお客さんは増えてきましたし、なぜか毎営業日、外国人のお客さんがいらっしゃいます(笑)。
それから、瀬戸内海をテーマにしたプロジェクトに関係して、外国人のライターやカメラマンによる事業をプロデュースする仕事も受けています。地元からの仕事の依頼が増えてきて、東京にいた頃より忙しくなっています(笑)。
真伊さん)
地域おこし協力隊として地域の課題をさぐり、とびしま海道『地域おこし協力隊』の情報をFacebook上から発信したり、地域産物である久比うどんや大長レモン、おばあちゃんの作ったジャムなどのPRに携わっています。前職で、料理ライターをしていた経験が役立っています。毎日どこかから声がかかって忙しいです(笑)。

引っ越し前には二人でアイデアをいっぱい話し合って思いつくままノートに書き込んでいました(笑)。
実際に移住してからは、最初はただ暮らすことに必死でしたが、なるべく地域のイベントなどに出るようにして住民のみなさんと話をしていくと、そのうちに何が可能で何が不可能か、求められているものが何かがわかってきました。
地域の子どもたちへ英語を教えてほしいとの声を受けて塾を始めました。また「トムの写真館」の経営も徐々に安定してきています。
県庁の方や呉市商工会の方に創業サポーターへつないでいただきましたので、協力隊後の取組については、これから具体的に準備していこうと思っています。

移住後の生活はいかがですか?

真伊さん)
私たちの中では、海や山の自然があることが移住後のライフスタイルのポイントでした。
なんといっても広島は海・山と都会が近いのが魅力です。広島市内で充分買い物もできるしアクセスがいいです。
地域の方に掘り起こしてもらって築100年の古民家に住んでいますが、目の前の海で、メバル、キスなどを釣って食卓にのせたこともあります。
また、小さな畑を借りて香草や好きな野菜を栽培していますし、レモンと甘夏の木が植えてある畑も借りています。でも野菜はいただきものが多くて。近所のおばあさんがガラガラッと戸を開けて、野菜を置いてサッといなくなる。「早!」って感じでお礼を言う間もないくらい(笑)。

トムさん)
移住する前には「田舎は便利じゃない」とよく聞きました。でも、実際こっちに来てみると全然不便ではなかったです。橋で繋がっているから都会に行きたければ車で2時間もすれば広島市の中心部に行けるし、買えない物もインターネットで注文すれば普通に届けてくれます。
広島県は面積が広いわりに色々なものが近くに感じられるのが魅力的です。歴史のある綺麗な町が広がっている御手洗の特徴、瀬戸内の特徴、呉の工業都市的な特徴、広島市の大都市的な特徴など、各地域の特徴が豊かでありながら程よい距離にある県だと思います。
それに天気が悪い日でも景色がカッコいい。島に雲がかかって少しずつ上がっていく…びっくりするような景色に出会うこともあります。

生活してみて価値観は変わりましたか?

トムさん)
東京では、夜が遅く、仕事の後に飲みに行くことも多かったのですが、こちらの人たちは、みんな仕事は17時で終わります。その代りにアクティビティに割く時間が増えました。
お金への感覚も変わってきました。東京は動くたびにお金がかかるという印象で、細々したものも計算すると結果的には大きい出費となりましたが、こちらでは使いたくても使う場所がなくて(笑)、収入以上にいい生活ができます。

真伊さん)
今は、家賃がかからないので、その余裕分を自分たちに投資しています。
東京に比べてスーパーの物価もそもそも安い。といっても野菜はほとんどいただきものや育てているもので十分。買うのはお肉と卵と牛乳くらいでしょうか。
こちらでは家でちゃんと作って食べるので、外でのお金の使い方が健康的というか、必要な時にしっかり使えて、ダラダラと流れ出ていくのがなくなりました。
あとは、ストレスフリーですね。電車通勤がなくなったことは大きいです。あんなにたくさんの人の中にいるのに、今までは他人に心を閉ざして生活していたんだなと気付きました。

こちらに来ると「行ってきます!」や「ただいま!」と言いながら、自転車通勤しています。他人なんですけど、会ったら「お元気ですか」と挨拶して家族みたいな安心感があります。人間関係で嫌なことはないです。
トムさん)
東京は、人は沢山いるけどみんな自分の世界で生きているし無関心ですね。ここはみんながみんなに興味を持っています。
想像していた地方の生活って、広々と自分たちのスペースに畑や家があってというものでしたが、実際は隣に民家があり都会とあんまり変わらないくらいの距離感です。でも息苦しくない。干渉しすぎないけど気にかけてくれるという感じです。

移住をしようかと迷っている人へメッセージをお願いします。

真伊さん)
簡単に言っちゃえば「人生豊かに生活できますよ」といいたいです(笑)。
私たちの場合、目の前に移住できるチャンスがあって、それを掴んだら住民の方が本当にみなさんいい人で躊躇することはなかったです。
よっぽど干渉が嫌いで地域行事なんて出たくないという人だと、移住する地域を考えないといけないと思いますが、絶対マイナスは無いと思います。
関心を持って情報収集しているということは、東京・都会を離れたいという気持ちが少しはあるということだと思うので、「一刻も早くだいたいのエリアを決めて足を運んでみてはどうですか!」と言いたいです。
トムさん)
まずは下見して、実際に地元の人たちと交流して、話をして、広島県庁の方のバックアップもあるから安心して移住しましょうよ(笑)。思い切って来てごらんよと伝えたいです。

真伊さん(仕事の日)

8:30 出社(自転車で出勤)
昼間 週4で地域おこし協力隊に勤務
17:00 仕事終了

真伊さん(ある日の休日)

8:00 起床
ゆっくり朝食
10:00 ドライブ
竹原でぶらり、お気に入りの陶芸家さんとお茶をしたり、竹原かんぽの宿の温泉へ
17:00 外食して買い物をして帰宅
時には、福岡や松山、高松、尾道、広島など周辺の西日本まで足を伸ばし、1泊旅行することもあります
トム 宮川コールトンさん / 宮川 真伊さん

関連インタビュー

INTERVIEW

アビ 会員特典を利用する! 無料 会員登録
サポート窓口/お問い合わせ