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INTERVIEW

人とのつながりで、福島から広島へ、広島市中心部から山深い湯来町へ。WWOOFで国内外の若者とつながりながら、太田川の源流と河口をつなぐプロジェクトを構想している。

佐藤 亮太さん

福島県 → 広島県
2011年
家族3人暮らし(妻・娘1) 1985年生まれ 田舎cafeおそらゆき

福島から広島へ夫婦で移住し、「温泉」を検索しながら見つけた、更に車で一時間の山奥へステップ移住。100万都市・広島市を見据えながら、山深い里の地域活性化の担い手となっている。

広島へ移住された経緯を教えてください。

私は愛知県出身で、妻は福島県出身です。
東京で妻と出会い、福島県で働いていましたが、東日本大震災の時、あっと言う間にライフラインが止まり何も機能しなくなり、食べ物でさえ配給をうけないと食べられなくなりました。
現代人はこんなにも脆いものなのかと、自分自身の力も含めて痛感しました。生きる智恵を身に付け、発信したいと考えはじめたのが移住のきっかけです。
その頃、たまたま私と妻の共通の友人が広島にいて、飲食店を立ち上げることになり、一緒に仕事をしないかと誘われて家族で移住をすることを決めました。震災からちょうど半年後です。
広島には縁もゆかりもありませんでした。妻の両親や親戚はみんな福島なので、反対まではされなかったですけど、妻は複雑な心境だったと思います。

湯来町とのつながりはどのようにできたのですか?

移住した当初は、広島市内の中心部に2年半くらい住んでいました。
元々田舎に興味があったのですが、温泉が大好きで、湯来町のことは広島に移住する前から「広島 温泉」というキーワードでネット検索して知っていました。広島市内に移住してから、湯来温泉にも2、3回来たことがありました。広島市内から車で約1時間、大都市の市域内にこんなに山深い地区があるのは面白いと思います。
私自身も湯来町と広島市内を行き来するうちに距離感が程よくなり、自然環境が好きで親しみも湧いてきて、この場所で何かやるのも面白いなとアイディアを膨らませていました。

湯来町に通い出して、NPO法人湯来観光地域づくり公社 ひろしまNPOセンター湯来分室の方や、地域活性化の活動をしている学生団体、地元有志、広島市在住のデザイナーの方と知りあいました。
2、3週間後に上多田地区の空き家情報が舞い込み、大家さんに繋いでいただきました。大家さんはすごくいい方で、さらに、この上多田地区は、地域を復活させるために取組がスタートし、活動が活発になってきたところだったので、ここなら何か一緒にできそうだと感じ、移住を決めました。
私が来る2年前くらいから、この地域でIターン受入など地元活性化の風土が出来つつあったそうです。この集落も人口100人をきって75歳以上が75%。1000年くらいの歴史があるこの集落を途絶えさせてはならないという危機感から、話し合いが始まり、まずは地域のビジョンを作って、細かいやりとりを一つずつこなし体制を整えていこうという中で、移住者は私が第1号だったようです。

本当の意味での「生きる力」を僕自身が身に着けながらそれを発信したいという気持ちを、ずっと心に抱いていました。
それを実現する場所は都市内ではなく、山岳部の方がやりやすい。資源も山ほどあり、活かしきれていないコンテンツもあり、それらと都市部を繋ぎながら仕事をしていけるのではないかと思いました。

湯来町での働き方について教えてください。

今は、元々消防団の屯所だった空き家を改装した「田舎cafeおそらゆき」を経営しながら、お店の1年分のお米を栽培したり、琵琶湖原産の高級魚・ホンモロコの養殖もしています。
まず、このカフェ経営の話をいただけたのは幸運でした。今は広島市内出身の店長が、地域のおじいちゃん、おばあちゃんの家に居候させてもらいながら、お店を切り盛りしています。
また、カフェはWWOOFの登録もしていますので、こんな山深いところでも、全国から、海外から、若い人がやってきます。
私は「広島市湯来交流体験センター」にも週2回ほど出て体験プログラムの開発や運営したり、広島市内などの様々なプロジェクトに関わっています。

広島市湯来交流体験センターでは、夏にはカヌーや沢登り
などリバーアドベンチャープログラムを作ったり、秋には山登りなど、季節に応じたプログラムをつくっています。
川はとてもきれいで、ダムがないのは珍しいそうです。川坊主、川小僧、パンツ一丁で泳いでいる子供たちがこんなに集まる地域は、いまどき少ないですから、湯来の川を楽しんでもらえるような、太田川上流プログラムを作り、発信していきたいです。
山の整備としては、「きらめ樹間伐」といって、子どもでも安全で楽しく参加できる間伐の方法もあります。一緒になって山に入って整備していくことが出来れば、「体験型」の観光コンテンツにもなるし雇用も生まれ、いろんな相乗効果が見込めます。僕自身もいろんな技術も教わりながら、もっと農業や林業に関わっていきたいです。

また、広島市内で幾つかのプロジェクトに関わっており、無理のない距離感で行き来しながら活動しています。一つは、私が支部代表として活動している「NPO法人チャリティーサンタ」の活動です。
広島名産の牡蠣は、「山が育てる」と言われるように、太田川の源流であるこの湯来町と、河口のある広島市内の関係はとても重要だと思っています。今後、山と都市をつないだプロジェクトをいろいろ展開していきたいと考えています。

湯来町や広島での生活はどこが魅力ですか?

地域の方は、お米の栽培も一緒になってやってくださったり、本当にみなさんよくしてくださりありがたいです。
ここの魅力は、100万都市である広島市内から一時間で来ることができるということだと思います。ドライブにも最適な距離ですし、大きなアドバンテージです。
広島県全体で言うと、海・山が両方あって、しかもそれらが近い距離感にあることが魅力だと思います。私自身もずっと山にいると、たまには海の開放感にあたりたくなり、そういう時は瀬戸内海に行きます。思いたったらすぐみたいな、距離感がいいですね。
また、広島市は都市としての規模感が良いので、人と一度つながり始めると似たような興味関心をもった人と繋がりやすいです。広島では繋がりだしてからの広がりがすごく早く、一緒に仕事させてもらったり、プロジェクトに関わってもらったりと、面白いように展開していきます。東京よりも一層密な感じです。

移住を考えている方へのアドバイスをお願いします。

住む前に、その土地へ頻繁に足を運び、地域の方とコミュニケーションをとったり、顔を覚えてもらうことがすごく大事だと思います。
私自身もそういうアドバイスをもらい、住むのを決める前には月一回程度、移住を決意してからはそれ以上のペースで、何かあるごとに足を運んできました。
本当にこの集落に住む意志があるんだってことを、こちらが姿勢で伝えていく必要があると思います。
私のように、一旦広島市内に住んで、そこから考えるのもありではないでしょうか。広島がどんな場所かを知るという意味では、まずは広島市内で文化を掴みながら、いろんな繋がりを作るのがいいと思います。

ある一日の過ごし方

6:00 起床
午前中 新聞配達
ホンモロコや田の様子を見たり、カフェへ
14:00 広島市内へ ミーティング
23:00 事務処理等
24:00 就寝
佐藤 亮太さん

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