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INTERVIEW

カメラマンから「蔵人」へ。現地訪問で出会った、酒造りの仕事と竹原という街

宮本 朝希 / 宮本 純子さん

東京都→竹原市
2022年8月
朝希さん 藤井酒造蔵人
純子さん たけはら海の駅勤務、キッチンカー運営など

江戸時代前期から、製塩や酒造りで栄えてきた街・竹原。
2022年の夏、そんな竹原市に移住してきたのが宮本朝希(みやもと ともき)さんと純子(じゅんこ)さんご夫婦。移住先探しで訪れた竹原市と、移住コーディネーターとの出会いを経て、カメラマンだった朝希さんが新たな転職先として選んだのは「蔵人」でした。

仕事中心の暮らしが「できてしまう」東京を離れて

朝希さん)
移住前は、東京で不動産広告のカメラマンをしていました。あまりにも忙しくて僕には合わない職場だったんですが、辞める勇気を持てずにいて。それが移住する1年前、大きな仕事が終わってひと息つけるタイミングがあったんです。悶々としている僕を見兼ねた純子さんが、「じゃあ、移住しちゃおうよ!」って。30歳を目前に控え、ここでひとつ環境を変えるのもいいなと思い、移住を決意しました。

純子さん)
「いつか身体を壊すんじゃないか」って心配になるくらい、ずっと忙しそうにしていたんです。彼のようなクリエイティブの仕事は都会に多いですし、自然と仕事中心の生活が「できてしまう」んですよね。でも、私たちにそういうハードな暮らしは合わないな、と前々から感じていて。
私は花屋や飲食店など職を転々としていたので、移住先の仕事探しも楽観的に考えていました。なんとでもなるだろう、と。それよりもまず彼に、自分を消耗しない、やりがいのある仕事に就いてほしかったんです。

まずは広島観光へ。

純子さん)
私と彼の両親がそれぞれ島根と兵庫に住んでいること、20代からの友人がいるという理由から、移住先として広島を考えました。ネットで色々調べていくうち、東京の有楽町に「ひろしま暮らしサポートセンター」という移住の相談窓口があることを知ったんです。

朝希さん)
純子さんとちがって、僕の知り合いは広島に1人もいないですし、ちゃんと旅行に来たこともなくて。知らない土地への不安が当然あったので、とりあえずサポートセンターに行きました。相談員の森上 陽子(もりうえ ようこ)さんとはじめてお会いしたのもそのとき。
まずはライトな気持ちで広島に行ってみようと、翌月には西の宮島から東の福山市まで、ガイドブックを片手に広島を横断しました。

結果、すごく気に入りましたね。飯と酒がほんまに美味しくて……あまりにも楽しかったから、東京に戻ってすぐ旅行中の写真を森上さんへ見せに行ったくらい。実際に訪問することで、広島に「住む」という実感がようやく湧きました。

醤油豚骨のスープがおいしい広島の中華そば!

ソースがビールに合うお好み焼き!

4ヶ月間にわたる職探しがスタート。相談員による「とっておきの仕事リスト」を見ながらリサーチ

朝希さん)
そこからすぐに、職探しをはじめました。思いきって前職とは全くちがう仕事に就きたいな、と。でもネットの求人に出ているようなデスクワーク系の仕事は「ちょっと違うかも」と思ったんです。かといって具体的に何をしたいのかが分からず、引き続きひろしま暮らしサポートセンターで相談に乗ってもらうことに。

面談では、「とっておきの仕事リスト」をたくさん見せてもらいました。お話も色々と伺いました。ひとつずつ検討していくうちに、自分でつくったものが目の前の誰かに喜んでもらえるような、「ものづくり」の仕事に興味を持ったんです。最終的に残ったのが、チーズ職人・蔵人・味噌職人・家具職人という、まさにクラフトマンシップ系の仕事でした。

相談員との面談で見出された「発酵」への興味

朝希さん)
興味を持った仕事が、本当に自分に合っているのか確かめるため、会社訪問をすることに。どういう日程でどこに訪問するか、面談で一緒にプランを立てていきました。そのときに言われた、「今回のテーマは『発酵ツアー』ですね」という言葉がすごく印象に残っています。僕もはじめて気づいたんです、「そうか、自分は発酵に興味があったんだ!」って(笑)。森上さんとの面談では、こうして自分でも気づかなかったことにたくさん気づかせてもらいました。

会社へ訪問したのは、初回の旅行から4ヶ月後の2022年1月。移住コーディネーターさんや市の職員さんによる案内のもと、府中市・東広島市などにあるいろんな企業を見学。実際に働いている方々ともお話ししました。結果、酒造りに憧れを感じるようになって。明確に、「蔵人になりたい」とそこで思ったんです。

純子さん)
東京に戻って森上さんに伝えると、「ついに見つかったんですね!」と泣いて喜ばれたのをよく覚えています(笑)。最後のほうは、もはや雑談をするために有楽町へ行っていましたからね。1回につき、2,3時間くらい話し込んで。

朝希さん)
移住の不安でいっぱいになっているとき、森上さんとひろしま暮らしサポートセンターで話をすることが心の救いだったんですよ。だから蔵人になりたいと言ったときの反応を見て、僕も嬉しくなりました。

訪問最終日。職も移住先も、とんとん拍子で決まった移住コーディネーターとの出会い

朝希さん)
後から知ったんですが、広島県東広島市の西条という場所は「日本3大酒どころ」のひとつだったんですよね。それなのに、西条ではなく竹原市にした理由は……。

純子さん)
私が「キッチンカー」と出会ってしまったからなんです(笑)。というのも、いつか「自分のお店を持ちたい」という夢が私にあって。元々タイ料理を好きでつくっていたので、いつかキッチンカーでいろんな場所へ行けたらいいなぁと思っていたんです。

面談時に、森上さんから「竹原市に、キッチンカーを持っている移住コーディネーターさんがいる」と話を伺って。当初は竹原市に訪問の予定はなかったのですが、私が「ぜひ行ってみたいです!」と伝えたところ、森上さんが繋げてくださり竹原市で移住のサポートをされている福本博之(ふくもと ひろゆき)さん とお会いすることになったんです。

とっても気さくな方で、出会ってすぐに「タイ料理店? 竹原市にないし、ちょうどいいね!(キッチンカーは)今使ってないから貸すよ! 」と言われました(笑)。聞くと、福本さんは葬祭屋の社長。なぜ彼がキッチンカーを持っているのかは謎のまま、「乗ってみる?」と、その場で試乗もさせてもらって。でも、そんな福本さんのような方がいる竹原市のことを、2人して気に入ったんです。街の雰囲気も落ち着いていて、いい街だなと。

朝希さん)
今勤めている藤井酒造も、福本さんに紹介してもらいました。ちょうど会社も蔵人を探していたようです。あのときキッチンカーを見に行かなかったら、僕たちは竹原市にいなかったかもしれない(笑)。

しずかでコンパクトな街・竹原

朝希さん)
蔵人の仕事は思った以上に楽しいです。すこし前に、「皆造(かいぞう)」といって今年のお酒をすべてつくり終えました。肉体を使うハードな仕事でしたが、日本酒のもとになる「もろみ」を毎日見ていると、表情がだんだんと変わっていくんです。それがもう愛おしくて……。

純子さん)
彼が蔵人になってから、家でもこうやって楽しそうに仕事の話をするようになりました。前はほとんど仕事のことを話さなかったのに……。それだけやりがいのある仕事に就けたんだと思って、今はホッとしています。私も福本さんの紹介を機に、キッチンカーや地元での仕事をいくつか掛け持ちしているんです。

朝希さん)
竹原という街もすごく気に入りました。しずかで、コンパクト。車を15分走らせば、生活に必要なものはすべて揃います。比較的大きい隣町にもすぐ行けますし、平日はここで穏やかに過ごして、たまに街へ遊びに出かけるという、僕たちが望んでいた暮らしができています。これからは、純子さんのお店づくりも手伝っていきたいんですよ。

純子さん)
そうなの!?  今、はじめて聞いた(笑)。竹原はゆったりしているけれど、やりたいことがあればこうしてみんなが応援してくれる。のんびりゆっくり、これからも自分たちのペースで頑張っていきたいです。

竹原市の移住コーディネーター・福本さんからのコメント

宮本夫妻と会ったとき、彼らの雰囲気から「この2人は竹原に合う!」と思いました。竹原市はコンパクトで便利な街である一方、人口がそこまで多くないので選べる職も限られるという側面があります。けれども「前職とは全くちがう仕事がしたい」「たまに遊びに出掛けて、ふだんはおだやかに暮らしたい」といったおふたりの生活の希望を聞いて、広島市内の中心部ではなく竹原市のように小さな街が向いていると思ったんです。

私は竹原葬祭という葬儀屋の2代目をつとめながら、これまでも竹原市に移住されてきた方々のサポートに取り組んできました。しかし移住後に人生を切り開けるかどうかは、みなさん次第。竹原市以外の各市町にも、移住コーディネーターはいます。

広島に移ってよかったと思えるよう、ひろしま暮らしサポートセンターを通じて我々をうまく「利用」いただければと思います。竹原は、いい街ですよ〜。

藤井酒造について

文久3年(1863年)創業。豊かで良質な地下水に恵まれた竹原の地で酒造業を興す。
規模は小さいながらも、遊び心とこだわりを両立させた本物の酒造りに挑戦し続けており、代表銘柄である「龍勢」は第一回全国清酒品評会で日本一を獲得。
また、「龍勢 活濁酒 -八反35号-」は2023年G7広島サミットワーキングディナーの乾杯酒としても採用されるなど、確かな実力を持つ酒造として注目されている。

平日<夫・朝希>

7:30 起床
8:30 出勤
17:00 退社、酒造りの勉強
19:00 帰宅
20:00 夕食、晩酌、入浴
23:00 就寝

平日<妻・純子>

7:00 起床、コーヒー、朝食、お弁当など
8:00 パートへ
14:00 昼食、家事、お昼寝
18:00 コーヒーと読書など
19:00 夕飯作り
20:00 夕食、晩酌、入浴
23:00 就寝

休日<夫・朝希>

10:00 ゆっくり起床、朝食
13:00 昼食
14:00 ダラダラ昼飲みか外出、買い物など
18:00 帰宅、休憩
20:00 入浴
21:00 晩酌、夕食、TV鑑賞
24:00 就寝

休日<妻・純子>

18:00 までは夫と同じ
19:00 入浴
21:00 晩酌、夕食、TV鑑賞
24:00 就寝
宮本 朝希さん / 純子さん

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